2018/04/03
シリーズ第四弾 「学習」とは何か。-その4:英語の勉強の仕方-

シリーズ第四弾 「学習」とは何か。-その4:英語の勉強の仕方-

 

今回は、効果的な、有機的な英語の勉強の仕方をご紹介したいと思います。

 

日本では、英語の修得は、一見難しくて、時間がかかる大変な作業のように思われがちです。実は、そうではありません。なぜなら、日本で生まれ育ったほとんどの人が日本語を母国語として修得します。もし言語の修得を脳ができないのであれば、母国語である日本語も修得できないことになります。人はほぼ無意識の状態で、自然に日常生活の中で少しずつではありますが、着実に日本語を体得していきます。ほぼ無意識レベルで日本語を学んだため、自分がどのようなプロセスで学んだのかを正確に覚えていません。私の言語教育における長年の経験から言わせて頂ければ、英語も日本語も違いはあれ、同じ言語なのです。日本語を運用できるということは、英語もきちんと学べば運用できるということになります。ですので、日本語を話せる人なら誰でも英語を話せる可能性が高いということになると私は考えています。

 

では、なぜ日本人は英語を修得することが難しいのでしょうか。それは、母国語である日本語と英語の間に存在する共通点と相違点を理解して、それを日々の学習の中でそれらを活用していないという点が大きな落とし穴なのです。共通点は、そのまま知識を利用すればいいだけです。問題は、相違点です。この違いをきちんと正確に理解せずに学習を進めて行けば、多くのエラーを生むことになり、自分の言っていることを理解してもらえないという悲しい状況を作り出すことになります。

 

では、その大きな相違点とは何か、私が思う最大の壁を説明します。それは、母国語の干渉です。母国語の邪魔です。では、母語干渉から生まれるその大きな問題とは何か。それを2つの視点で説明します。

 

ポイント①:語順(情報の並べ方・伝達の順番)

以下の例でその違いを見ていきましょう。

「私は昨日図書館に本を借りるために行きました。」

この日本語を英語にすると、典型的な英文は次のようになります。

“I went to the library yesterday to borrow some books.”

日本語は、構造上、典型的に「主語 ~ 動詞。」の順番になります。一方、英語では、「主語 + 動詞 ~.」になります。また、英語は、動詞中心言語なので、動詞と相性の良い情報から起きていくという傾向があります。「行く」と言えば、「どこに」→「いつ」といった風に語順が決まります。このように、日本語と英語では、全く情報の伝達の順番が異なります。日本語を作って、それを英語に変換するのは、時間がかかるだけでなく、理解しづらい英語になる可能性が高くなります。

 

ポイント②:直訳

次に直訳から生まれる問題です。以下の例で、見てみましょう。

「私は10分後にこの薬を飲まなければなりません。」を英語に直訳すると、学生がよく以下のような英文を作ります。

“I must drink this medicine after ten minutes.”

ここで、「~を飲む」=drinkと考え英文にすると意味は通じると思いますが、面白い響きのする英文となります。薬は飲み物ではないので、drinkは使いません。「自分から積極的に薬を体内に取り込む」と考え、“take”という動詞を選択し、“take this medicine”という表現を作ります。では、なぜ“take”を使うのか。それは、“take”の中核となる意味(コア・ミーニング)が「何かを手にして自分のところに取り込む」だからです。このコア・ミーニングを知っていれば、“take a shower”「シャワーを一回取り込む→浴びる」、“take a picture”「写真を1枚カメラの中に取り込む→写真を撮る」、“take a taxi”「タクシーを交通手段として取り込む→利用して行く」、これらのことが明確になります。

また、「10分後に」を英語にすると、多くの日本人が直訳をして“after 10 minutes”にする傾向があります。これは、学校で「~の後」=“after ”と丸暗記しているからです。この文脈の場合、英語では「今から10分の空間を取って」と考え、“in 10 minutes (from now)”とします。前置詞“in”を使います。

このように、最重要語の基本動詞や前置詞のコア・ミーニングが分かれば、数多くの適切な英語表現ができるようになるわけです。

 

以上の点を考慮に入れ、効率よく、有機的に学習を進めて行けば、小さなエラーは減少し、英語らしい英語を話せるようになるはずです。

 

次回は、この続きを説明します。

 

マナビ・クリエーション

校長 吉原 学